【連載1章ー4】数学も物理も化学もロマンだ(後編)

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高校で学ぶ教科の中で僕が好きだったのは化学や物理、数学だった。バンドメンバーや野球部の友達がみんな理系に進んだことと、理系から文系に変更する、いわゆる文転ができること、それが決め手となって僕も理系に進んだ。けれど、理系には日本史の授業がなく、歴史好きだった僕は後悔することになる。

「仲の良い友達が多いから」という理由で理系を選んだのはよくなかったと、今は思う。興味がある方に行く、それが大前提で、そうすべきだ。そもそも、理系文系に別れるシステム自体が時代に合ってない。自分の好きな科目を選択できる制度があれば、興味がある科目を理系文系関係なく学ぶことができる。二択しかないよりも、いろんな組み合わせが合った方が多様化していく社会には合っていると思うし、何より好きなことをやった方がモチベーションは上がる。

少し熱くなってしまったので、もう一つだけ主張させてほしい。化学や物理、数学といった教科の授業は、基本的に「教科書読むだけ、問題解くだけ」だ。これじゃあ面白くないし、興味がもてない。

そこで僕が提案したいのは、科学史、数学史を授業に取り入れることだ。「法則を発見した人物やその経緯など、背景にある歴史」を教えるのだ。今は教科書のコラムでちょこっと触れるくらいでみんな読み飛ばしている。けど「それ」を知っているか知らないかで、世界は変わる。くらいに僕は思っている。

そう思うようになったきっかけは、山田大隆氏の本を図書館で借りたことだった。
『心にしみる天才の逸話20(講談社)』『天才科学者の不思議なひらめき(PHP研究所)』という、ニュートンやアインシュタイン、湯川秀樹、ライト兄弟、ノーベル、アルキメデスといった古今東西の天才科学者たちが、いつどこで何をきっかけにその後の「発見・発明」をしたのかという話を「一人の天才の人生をしっかり見つめる」という視点で書かれた本だ。

この本を読んだのは確か中学のときで、まだ化学や物理の教科書に登場する「数字とアルファベットで構成された無機質な方程式や化学式」には馴染みがなかった。それもあってか、登場する「天才科学者」たちが人生をかけ苦労して研究して見つけて、また苦労して……といったエピソードをただ興味深く読んでいただけだった。

高校の授業でそれらの数式を目にしたとき、「あのおじさんが苦労して見つけたやつだ!」と嬉しくなった。
例えば有機化学で出てくる『ベンゼン環』という六角形。
「ケクレさんが苦労して考えだしたベンゼン環を、全然違う時代、場所で生きている田舎の少年が書いてるよ!」
そう思うとあの六角形に愛情が湧いてくる。
気体の体積と圧力、温度に関係する『ボイル=シャルルの法則』
ボイルさんとシャルルさんという、百年くらい時代が離れた二人の科学者が研究していたことが一つの法則になる。めっちゃかっこいい。
昔のどこか遠い国の科学者が考えだした公式を、今、極東の日本という島国で子ども達が勉強している。世界は時空を超えてつながっているのだ。ロマンだ。

そんな思いで教科書を開くと、無機質だった数式や化学式を生き生きと感じられるのだ。知っている話が出てくる嬉しくなる。馴染みがあると興味を持つし、愛着が湧く。そうすれば、元素記号、名前、発見者。すべてがただの暗記じゃなくなり、勉強が楽しくなるのだ。

もっと身近なこともある。例えば「カイロは何故温かくなるのか」とか「尿と汗の成分は似てる」とか。錬金術師が失敗した理由もなんとなく分かったり。勉強というとかしこまって聞こえるが、豆知識、うんちくみたいに軽い感じで知ることができたら、抵抗なく興味がもてるし、何よりワクワクするじゃないか。

それだけをがっつり授業でやらなくても、ほんの五分くらい、そんな話をしてから本編に入ればいいんじゃないか。それだけのことで化学や物理、数学が楽しくなる生徒が増えるんじゃないかと僕は思う。友達に「化学教えて」と頼まれたとき、僕はそんな思いでケクレさんの話から始めた。友達のリアクションはこうだ。

「へえ。で?」

それでも、東大合格後に家庭教師をしていたときの生徒には響いた。面白がってくれたし、理解も早かったように思う。要するに
「先生がいかに生徒に興味を持たせるか」
これが勉強する上で非常に重要だと思うのだ。

そして歴史を知ることは、あらゆる分野においても非常に有効だ。それまで、ただ歴史が好きで、面白いなあ。かっこいいなあ。ぐらいのスタンスだった僕が、「歴史を学ぶ」ことに社会的意義を見いだし始めたのもこのことからだった。

そんな感じで、学校や勉強に思うところはたくさんあったけれども、その頃の僕がめざしていたのは「ミュージシャン」だ。まだ自分がどうにかしようとか、ましてやビジネスにしようだとか、そんなことは頭をよぎりもしなかった。

大学進学は全く考えていなかった。学校で定期的に受けた模試では、志望校に「琉球大学」と「お茶の水女子大学」を必ずマークしていたくらいだ。琉球大学は安室奈美恵さんやSPEEDを輩出した土地だったからという軽い理由。お茶の水女子大学はその名の通り女子大だ。僕が行けるわけがない。それくらい、興味がなかった。そんな僕に、先生はあきれて「あんたどうすんの?」とよく言っていたし、親も「ミュージシャン?何言うてんの?あほちゃう?」って感じだった。

友達は子どものときからお医者さんになるため医学部を志望していたり、理学療法士だったり、あっきーも父親が大学教授だったこともあって名古屋大学を目指していた。

そんな中で僕は「いかにして東京に行くか」だけを考えていた。

続く(この連載は毎週月・木曜に更新します。)

《出版社募集!》
本連載は「なんでサムライなの?バンドやってたって本当?は!?歴史?っていうか東大?株式会社??わけわかんない・・・・」という疑問にお答えするべく、紫式部さんにインタビュー・執筆して頂きました。

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矢文(メール)はryo@dothesamurai.comまでご連絡下さいませ。
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RYO!

プロフィール
株式会社DO THE SAMURAI 総大将(代表取締役) / プロのサムライ
東京大学文学部。
在学中より「サムライを切り口に、日本の文化や歴史に’楽しく’触れるきっかけをつくる」という志のもと、毎週、世田谷松陰神社の歴史資料館で塾を開講、史跡ツアー・歴史イベントを主催。
そして、2016年4月に法人化。仲間とともに新たなスタートを切る。
株式会社DO THE SAMURAIでは、
「’日本から世界へ”国内の地域から地域へ、
日本人一人ひとりが文化や歴史を発信できる’外交官’に」というビジョンのもと、
地域の歴史ブランディングなど新たな事業に取り組んでいる。
講演依頼、問い合わせなどはryo@dothesamurai.comまで。
Twitter:https://twitter.com/RYO_ReaL
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株式会社DO THE SAMURAI:http://dothesamurai.com
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