【連載1章ー1】魔法の言葉を覚えた小学生(前編)

【連載1章ー1】魔法の言葉を覚えた小学生(前編)

 僕が生まれたのは滋賀県彦根市。父は公務員で母はパートという、いわゆる「一般家庭」。人と少し違うところがあったとすれば、生まれた時から歯が生えていたことくらい。よくある話で、両親がマイホームを購入したのをきっかけに岐阜県多治見市に引っ越して、十九歳までをそこで過ごした。

 

 田舎から東大に進学するということは、どうやら都会のそれよりも「特別視」されるらしい。「幼少期から特別賢かったんでしょう」とか、「親の子育てに秘訣があったのでは?」などとよく言われるが、そのお決まりの質問の前で親が苦笑いする顔が脳裏に浮かぶ。特別なことなど、本当に何もなかったのだから。

 

……いや。一つだけ、普通の家庭とは違うことがあったとすれば、母親が少しばかり「ミーハー」だったのだ。

 「ミーハー」と言っても、アイドルの追っかけをしてツアーで全国を飛び回る、なんてことはなかった。ただ、タレントやドラマに熱中すると、それを現実に持ち込もうとするのだ。

 

 僕がお腹にいる時、産婦人科で観ていた昼ドラ『炎の旅路』にどハマりして、竹内力さん演じる主人公の名前「亮」を僕につけたのがその始まりだった。小学生の宿題の定番として「自分の名前の由来」というものがある。僕は自分の名前に込められた意味を知りたくて、ワクワクしながら母に訊いた。

「亮って名前は何でつけたの?」と。

 

 その答えがまさか、小学生には到底理解できないドロドロの愛憎劇の主人公から戴いたものだったとは。聞かされたときの、僕の気持ちが分かるだろうか。

 僕が固まったのを見た母は「しまった!」と思ったのだろう。取り繕うように、

「亮という感じは『高』に似てるやろ。高い目標持ってほしいと思って」

と言った。僕は静かにうなずいて、そのまま書いて提出した。

 

 母のミーハーなところは、他にも子育てのいろんなところで発揮された。しつけが必要な場面では、母の好きなアイドルの名前を出してきたのだ。

 

 例えば、おはしの持ち方を覚える時期。普通なら「ちゃんと持ちなさい!」と叱るところだが、うちの母親はこうだ。

「そんなおはしの持ち方じゃ、ビストロSMAPに出た時恥ずかしいわよ!」

母親の影響ですっかりSMAPのファンになっていた僕は「それは困る!」と必死で正しいおはしの持ち方を覚えた。僕のオーダーで、彼らが作ってくれた料理を「綺麗に食べるために」。

 そして若干五歳の僕は、喜んでSMAPのファンクラブに入会することとなる。ミーハーな血はしっかりと受け継がれていたのだ。


続く(この連載は毎週月・木曜に更新します。)

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本連載は「なんでサムライなの?バンドやってたって本当?は!?歴史?っていうか東大?株式会社??わけわかんない・・・・」という疑問にお答えするべく、紫式部さんにインタビュー・執筆して頂きました。

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RYO!

プロフィール
株式会社DO THE SAMURAI 総大将(代表取締役) / プロのサムライ
東京大学文学部。
在学中より「サムライを切り口に、日本の文化や歴史に’楽しく’触れるきっかけをつくる」という志のもと、毎週、世田谷松陰神社の歴史資料館で塾を開講、史跡ツアー・歴史イベントを主催。
そして、2016年4月に法人化。仲間とともに新たなスタートを切る。
株式会社DO THE SAMURAIでは、
「’日本から世界へ”国内の地域から地域へ、
日本人一人ひとりが文化や歴史を発信できる’外交官’に」というビジョンのもと、
地域の歴史ブランディングなど新たな事業に取り組んでいる。
講演依頼、問い合わせなどはryo@dothesamurai.comまで。
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株式会社DO THE SAMURAI:http://dothesamurai.com
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