【連載1章ー5】噛み合わない会話

【連載1章ー5】噛み合わない会話

【1章ー1】魔法の言葉を覚えた小学生(前編)
【1章ー1】魔法の言葉を覚えた小学生(後編)
【1章ー2】なりきり法 最強(前編)
【1章ー2】なりきり法 最強(後編)
【1章ー3】音楽最高!人生はROCKだ!(前編)
【1章ー3】音楽最高!人生はROCKだ!(後編)
【1章ー4】数学も物理も化学もロマンだ(前編)
【1章ー4】数学も物理も化学もロマンだ(後編)

高校二年。まわりは将来何になりたいかを現実的に考え、そのための進学を検討し始めていた。バンドに熱中していた僕は、本気でミュージシャンを目指していた。

県内で五番目くらいの進学校だったので友達はみんな大学を目指していたのだが、音楽で成功することしか頭になかった僕には進学という選択肢はなかったのだ。というより、大学に行く意味が分からなかった。
同級生の中にはやりたいことがあるけど親が言うからとりあえず行ける大学に行く。という子もちらほらいて、僕はその子たちにイラついて、よくこう言っていた。
「やりたいことが他にあるのに、大学に行くヤツはバカだ!」

学校の授業はつまらなかった。というより、先生によってつまらなくなるのだと思っていた。中学の時通っていた塾の先生は面白くて分かりやすかった。同じことを教えるのに面白くもつまらなくもなるのだ。だから、学校がつまらないのは先生のせいだ。それに気づいている僕の方が、先生より頭がいいと思い込んでいた。

当然のことだが、そういう態度でいる僕が、先生や親とうまくやっていけるわけがなく、関係は日に日に悪化していった。友達との関係は良好で、みんなでワイワイ楽しくやっていたが、将来の話をする時だけはどうしても話が噛み合わなかった。それでも自分の意志を、スタイルを貫くのがROCKだ、と、そう思っていた。

ところがだ。当時好きだった子が「受験のことで悩んでいる」と僕に打ち明けてくれた。何かアドバイスをして、カッコいいところを見せたい。けど、何て言っていいか分からなかった。いや、その悩み自体を僕は理解できなかったのだ。これは大問題だった。こじれてきている先生や親との関係、友達と分かり合えない会話、好きな子との関係、みんな上手くいい方に持っていく方法はないだろうか。僕は必死で考えた。そして導きだした答えが、これだ。

「東大へ行く」

僕が目指しているのは、あくまでもミュージシャンだ。大学には行きたくなかったが、高校卒業後、東京に行くと決めていた。東大なら東京にある。そして日本の最高学府を目指すということは、他のどの大学よりも高いレベルを目指すということ。誰よりも難関を目指すということは、誰より悩むはずだ。医学部を目指す好きな子の悩みにも共感して相談に乗れるはず。親だって先生だって、文句は言わないだろう。東大の象徴である赤門は大好きな旧加賀藩主前田家上屋敷の御守殿門だし、僕と東大には縁があるんだ!これで万事解決だ!そう、本気で思っていた。

さらに僕の気持ちを後押ししてくれた言葉があった。
「東大は誰でもいける。勉強には答えがあるからな。野球は常に変化して答えがないから東大より難しい」
少年野球チームの監督のありがたいお言葉だ。誰よりも信頼していた監督から言われたこの言葉は、東大は簡単だ。という強いイメージを子どもの僕に植え付けていたのだ。それに、Mステに出演できる新人ミュージシャンは大体毎年百人くらい。東大は毎年約三千人が合格する。比べてみたら三十分の一の労力で東大にいけるはずだ。

どう考えても、東大受験は簡単だった。

高二の大晦日、いつものように一人で彦根城へ向かった。音楽のこと、野球のこと、友達のこと、家族のこと。一年間の出来事を順番に思い出して行く。そしてこれからのことを考える。大学受験。東京大学……。僕の夢はミュージシャンとしての成功だ。武道館ライブだ。その通過点として、東大へ行くのだ。バンド活動と勉強、両立させるんだ。

東大を受験することへの迷いはなかった。

「受験するなら東大一本でいこう。滑り止めとかROCKじゃないから」

国宝彦根城の天守閣で、僕はそう決意した。

続く(この連載は毎週月・木曜に更新します。)
《出版社募集!》
本連載は「なんでサムライなの?バンドやってたって本当?は!?歴史?っていうか東大?株式会社??わけわかんない・・・・」という疑問にお答えするべく、紫式部さんにインタビュー・執筆して頂きました。

同時に企画書も公開して、出版社も募ります!
企画書【現役東大生社長 職業:サムライ(仮)】
矢文(メール)はryo@dothesamurai.comまでご連絡下さいませ。
これまでの連載はコチラ!

RYO!

プロフィール
株式会社DO THE SAMURAI 総大将(代表取締役) / プロのサムライ
東京大学文学部。
在学中より「サムライを切り口に、日本の文化や歴史に’楽しく’触れるきっかけをつくる」という志のもと、毎週、世田谷松陰神社の歴史資料館で塾を開講、史跡ツアー・歴史イベントを主催。
そして、2016年4月に法人化。仲間とともに新たなスタートを切る。
株式会社DO THE SAMURAIでは、
「’日本から世界へ”国内の地域から地域へ、
日本人一人ひとりが文化や歴史を発信できる’外交官’に」というビジョンのもと、
地域の歴史ブランディングなど新たな事業に取り組んでいる。
講演依頼、問い合わせなどはryo@dothesamurai.comまで。
Twitter:https://twitter.com/RYO_ReaL
Facebook:https://www.facebook.com/ryo.real.7
株式会社DO THE SAMURAI:http://dothesamurai.com
友だち追加